定年後の「3K(お金・健康・孤独)」、聞いたことがありますか?
年金受給が引き上げられ、会社の雇用制度も変わり、国も会社もあてにできなくなった我々定年世代には厳しい世の中になってきました。
幸せな人生のためには お金も 健康も大事、孤独な老後は寂しい。
どれも疎かにできませんが、これに優先順位をつけるとしたら?
脳科学の見地から、ひとつの答えが示されています。
幸せに生きるために
「お金」「健康」「良い人間関係(つながり)」
定年後を幸せに過ごすには・・・
私の考えとして以前、生活に困らない程度の「お金」と「健康」がまずあって、それに加えて「孤独」を解消するための「生きがい」と「良い人間関係」が必要だ、ということを書きました。
定年後の過ごし方 ~ 早めの準備と、比べない生き方を
定年退職は大きな生活の変化をもたらします。どう過ごしていいのかわからない方、定年前から不安な方もいらっしゃるようです。そこで、定年退職をむかえるまでにしておくべき準備と、定年退職後の過ごし方のヒント、心の在り方について、私の体験を交えてお話しします。
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いずれも大切ではあるけれど、生きていくための「お金」と「健康」がないと、幸せに生きるための「生きがい」と「良い人間関係」を求める余裕がもてないのでは。という考えですが、
今回は「精神医学・脳科学」という角度から、その優先順位を導く説をご紹介します。
優先すべき順番がある
では、「お金」「健康」「つながり」の順番はどうあるべきか。
脳科学に基づいた「実用のための幸福」の見地から、どれを優先すべきかについて書かれた本があります。
樺沢紫苑『精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』(飛鳥新社)
この本の一部を再編集した記事を参考に、優先すべき順番について見ていきましょう。
幸福とは何か
脳の「3大幸福物質」とは
私たちの日常的な幸福感を構成する主たる幸福物質として、「ドーパミン」「セロトニン」「オキシトシン」の3つが特に注目されています。
私たちが「幸せ」を感じるときには、その他にもエンドルフィン、アドレナリン、ノルアドレナリン、GABAなど、なんと100種類以上の幸福物質が出ているのだそうです。
その中でも「3大幸福物質」とされるのが、上記3つの脳内物質です。
「幸福とは何か」への脳科学からの答え
脳科学的に言えば、「3大幸福物質」が脳内で十分に分泌されている状態が、私たちが「幸福」を感じている状態であると言えます。
即ち、
幸せとは
- 脳内で幸福物質が出た状態が幸せであり、
- 幸福物質を出す条件というのが「幸せになる方法」である
それぞれの幸福物質が分泌されている状態を調べてみると、幸福物質ごとに私たちが普段感じる「幸福」を次のように分類できます。
- 「セロトニン的幸福」とは、健康の幸福。心と体の健康です。爽やか、安らかな、穏やかな幸福感です。
- 「オキシトシン的幸福」とは、つながりと愛の幸福。友情、人間関係、コミュニティへの所属などの幸福です。愛に包まれた幸福感が出ます。
- 「ドーパミン的幸福」とは、お金、成功、達成、富、名誉、地位などの幸福です。心臓がどきどきするような高揚感をともないます。
いずれも大量分泌させて幸せを感じたいものですが、順番や組み合わせが大切とのこと。
順番を間違えると不幸になる?
セロトニン >オキシトシン >ドーパミン
何千人ものメンタル疾患の患者さんを診てきた著者による「正しい優先順位」は、
セロトニン的幸福 >オキシトシン的幸福 >ドーパミン的幸福
の順番です。
ドーパミン的幸福(お金・成功)が一番最後であることに注目しましょう。
お金さえあれば、ビジネスが成功すれば、それは幸せなのか?
・・・はい、それも幸せですが、健康(セロトニン的幸福)とつながり(オキシトシン的幸福)をおろそかにしていると、いずれ不幸が訪れる事例が非常に多いのだそうです。
健康 >つながり >成功
自分の健康を害してまで仕事に打ち込むのはNG。
セロトニン的幸福(健康)をないがしろにしてドーパミン的幸福(成功)を目指すと、メンタル疾患や身体疾患に陥り、幸福どころか「不幸」になってしまうのだそうです。
健康に留意し、セロトニン的幸福を達成しながら緩急をつけて頑張るのが大切です。
つまり、健康>成功。
そして、「家族のつながり」を軽視してまで仕事に打ち込むのもNG。
どれだけ仕事で成功しても、妻に離婚され、子供に毛嫌いされてしまっては幸せとは言えません。
したがって、つながり>成功。
最後に、健康とつながりはどちらが優先されるべきでしょう。
自分の健康、家族の健康があってこそ、つながりを大切にできます。メンタル疾患になると、普通のコミュニケーションすら困難になり、友人とのつながりも途絶えがちになります。
セロトニン的幸福(健康)を失うと、連鎖的にオキシトシン的幸福(つながり)も失います。
つまり、健康>つながり。
以上のことから、幸福な人生にアプローチするための手順(優先順位)は、
健康>つながり>成功
である、という結論になります。
幸せの正しい積み上げ方
「3大幸福物質」を「幸せな人生」に結び付けるには、その優先順位が大切であり、
心と体の健康(セロトニン的幸福)>つながり・愛(オキシトシン的幸福)>成功・お金(ドーパミン的幸福)
であることがわかりました。
この「幸せを積み上げる順番」で誤解してはいけないのは、時系列的にひとつひとつ積み上げていくというものではない、ということです。
健康にしっかり配慮しながら、
つながりも維持して、
成功を目指して頑張る。
というのが理想の姿であり、同時進行でもいいから優先順位を間違えないことが肝要です(この部分私の解釈)。
健康とつながりを「幸福の基礎」として、その上にドーパミン的幸福を積み上げていくことで、結果としてセロトニン的幸福、オキシトシン的幸福、ドーパミン的幸福の3つの幸福をすべて手に入れることができる・・・
「幸せの三段重理論」と著者は名付けています。
「いい人間関係」が幸福と健康を高めてくれる
「健康」と「つながり」が幸福の基礎であり、その上に「お金・成功」を重ねていくべき。
わかりやすいと言えばわかりやすい結論です。
しかし、健康をかえりみずに仕事にまい進するとか、人付き合いや家族をおろそかにしたまま定年を迎えるとか、よく聞く話ですね。
健康については、会社で検診があったり人に言われたり体調に出たりと省みる機会がありますが、人付き合いや家族のことは表に現れにくく、本人がその気にならないかぎり改善の方向に向かいません。
ここにもうひとつ、すごい研究の結果があります。
人生を幸せにするたったひとつのもの~75年の追跡調査から
ハーバード大の75年にわたる追跡調査「幸福と健康の持続に必要なのは何か」。それは富でも名声でも仕事でもなく「良い人間関係に尽きる」という結果が得られています。幸福と健康には「良い人間関係」が最も大事。定年後の幸福満足度をあげるヒントがここに。
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ハーバード大75年の追跡調査でわかった「幸福と健康」を高めるものとは、富でも、名声でも、無我夢中で働く事でもなく、「良い人間関係に尽きる」という事なのです。
重要なのは友人の数ではなく「身近な人達との関係の質」。
たった一人でも心から信頼できる人がいるかどうかが重要です。孤独は命取りになります。
もしも今、老後資金のためにひたすら頑張っているとしたら、幸せな人生のための「優先順位」を確認してみて下さい。
そしてまずはご自身の健康の不安をとりのぞいて、人とのつながり、良い人間関係に目を向けてみませんか?
人間関係に不安があると、何かに打ち込んでいても心のざらざらはとれません。
健康のためにも、幸せな人生のためにも、良い人間関係の貯金を増やしておきましょう。