個人的な話をします。
3年半前(2017年夏)に父を亡くして、母は静岡の実家で一人暮らしをしています。
ご近所にも恵まれ、県内に住む私の姉弟に見守られて、コロナ禍の中ではありますが穏やかな日々を送っているようです。
県外に住む私はもう1年以上会えておらず、今できることも少ないですが、小さな親孝行のつもりで私にしては珍しく続いているのが、
「毎週末の母への電話」です。
毎日でもない「週に一回」ですが、これでも昔は考えられないことでして・・・
昔話も含めて私的な話です、ご勘弁ください。
でも大事なことです。
若かった頃の実家への連絡頻度
男は家を出てなんぼ?
何でもそろっている都会に住んでいる人にはピンと来ないかもしれませんが、静岡の田舎高校生だった私は 大学生になったら実家を離れて一人暮らしをするのが普通 という感覚でした。
実家から通える大学の選択肢が乏しかったのもありますが、それより一人暮らしってものをしてみたかった。
男はいつまでも実家にいちゃだめでしょ、的な?
・・・いや男だけじゃないか、女の子も地元を離れる人多かったですね。このあたりは当時の進学事情だったかもしれません。
実家は「あってあたりまえ」
大学生になって地元を離れてからは、徐々に実家に帰ることも少なくなりました。
2年生ぐらいまでは長い休みのたびに帰省していましたが、段々と帰る機会は減っていって、お盆と正月ぐらいに。帰省しなかった時もあったかもしれません。
あの頃の感覚は、実家はずっとそこで「待っていてくれるもの」「あってあたりまえのもの」。
帰れば布団はあるし、基本的にご飯も用意してくれるところ、だと思ってました。
両親との会話はどちらかというと「めんどくさい」。
積極的に会話をする方ではありませんでした。
#帰るところがあるから自由でいられたんですよね。
盆と正月「帰るから」
そんなわけで、実家への連絡も帰省前に「いつ帰る」ぐらいのもの。
両親から見ても息子は生きていて当たり前だし、頻繁な連絡は求めていなかったと思います。
メールもLINEも携帯電話もない、連絡手段は電話か手紙しかない40年前のこと、大体そんなもんでしょう。付け足すと、部屋に固定電話はなくアパートに1台の公衆電話。当時の地方学生はそんなものでした。
大学時代を終えて、社会人になっても結婚しても、連絡頻度は変わらず。
それどころか、ちょっと重たい出来事もあって、連絡を絶ち切っていた時期もありました。
両親との距離感がわからなくなっていたのもこの頃です。
実家に帰るようになってからもしばらくは何を話していいのかわからず、雑談の糸口をつかむのにも苦労していたような、それすら拒んでいたような‥
その後いろいろあって会話は復活できましたが、その間にあったであろう実家方面の出来事や両親の日常について聞く機会はなく、父の死後に出てきた趣味の品々や思い出話を通じてあとから知ったことが多かったです。
父が死んだときに思ったこと
言いたいことは、すぐには言えない
一時期関係をこじらせてしまい、自分で日常会話のハードルを上げてしまった私が思ったのは、
「大事な会話も、日常会話から」ということです。
肉親との関係は切れることはなく、育ててもらって当たり前の時期を経ていますから気をつかわなくなりがち。
お互いに「察してもらえるはず」という甘えもあるでしょう。
日常会話がうまく出来ないのにいきなり用件だけというのは、話す方も聞く方もなかなか大変です。
普段会話していない同士では、内容の重い軽いすらすぐには感じられません。
言いたいことがあるときになかなか言い出せないストレスをなくすためにも、普段からの会話が大切です。
言えなかったことは、ずっと残る
「別に今さらそんなこと言わなくてもいいか‥」
言えずに過ぎてしまったこと、聞いてみたかったこと、たくさんあったように思いますが、晩年の父と過ごす時間は短く、昔のことを持ち出して穏やかな時を乱したくもなく、私から言い出すことはありませんでした。
ところが、言わなくてもいいと思っていたし、自分では納得していたはずなのに、ふとした瞬間に思い出してしまうのです。
そしてもう、それを尋ねることはできません。
小さな疑問は小さなうちに。言いたいことが言える関係があったらその時にモヤモヤ解消できて、今さら思い出すこともなかったかもしれないなあ‥
言いたいことがあったら、言える時に言っておいた方がいい。
普段のどうでもいい会話が、実は大事
たとえ親子でも、お互いの現在地を知ることから会話が始まります。
お互いの現在地の探りあいから会話が始まるのと、それが既に基本情報としてお互いにインプットされているのとでは、会話のスムースさが違うのはおわかりかと思います。
本題にもスムースに入っていけます。
営業のテクニックみたいですが、「相手に興味を持つ」というのはどんな人間関係においても基本ですね。
親子の場合「なんだそんなことも知らないのか」という謎の甘えも生まれがち。営業トーク以上に地味な努力が必要かもしれません。
相手のちょっとした変化を感じ取るには、普段のどうでもいい会話が大切です。
「おはよう」「おかえり」「おやすみ」
「天気いいね」「暑くなりそうだね」「傘持った?」
「どこ行ってきたの?」「これ面白いよ」「ちょっと教えて」
「聞いてくれる?」「これ知ってる?」「何かあった?」
・・・・
このレベルの簡単な会話が言えないこともあります。ありました。(反抗期ではなく)
でも、この程度の簡単な会話が、コミュニケーションを円滑にするためには不可欠なのです。
離れた距離は、急には縮まらない
ぎこちない会話から
母との電話の話に戻ります。
父の葬儀が終わってから、これからは毎週末、母に電話をしようと決めました。
とは言ってもこれまで一年に一回電話するかしないかだった息子からの電話。
母の第一声は、
「どうしたの?」
でした。笑
詐欺と間違えられなかっただけマシか ^^;
「これからは週に一回電話入れることにしたのでよろしく」
「ふ~~~ん」
みたいな会話で、週一コールが始まりました。
電話があたりまえになるまで
最初の半年ぐらいは、明らかに電話の向こうで母が身構えている様子を感じました。
私も緊張していたし、営業時代に苦手な電気屋の社長に電話するときぐらいの気構え‥ と言ったら大げさですが、電話をかけるのにそのくらいの気合が必要だったと思います。
ただ親の声を聞くだけのことがこんなに大変になっている自分。
表面は大丈夫そうに装っていても、かなりこじれていたんですねー、改めて。
たかだか3分か5分なのに、用もないのに電話をするのは結構ハードルが高かったです。
しかし、最初に「週一で電話するから」と宣言したことで、少しずつ歯車が回り始めました。
- 用事があるから電話する、ではなく
- 定期的に電話する(ノルマ・習慣)
- 用事がなくても電話する
- 用事がなくても互いの様子はわかる
- 続けていれば相手が構えなくなる
- 会話の糸口が増える
- 用事がある時に話をしやすい、聞きやすい
拒否されなければ続けよう、という気持ちで電話し続けて半年ぐらい経ったとき、母から
「ありがとうね」
と言ってもらえました。
あぁこいつ本気だな、と思ってもらえたんだと思います。
ベルを鳴らし続けることが大事なんじゃないの?
誰かが気にしてくれているという安心感
「ベルを鳴らし続けることが大事なんじゃないの?」
ドラマのセリフです。
「コントが始まる」の第3話、引きこもりの兄に電話をかけようとして「どうせ出ないから」とやめてしまう春斗に瞬太がかけた言葉で、つながった電話から兄が一歩を踏み出すという話(毎回心がじわっとするいいドラマです)。
だよねー、って思いました。
私の場合は電話をとってくれないということはありませんでしたが、当初は「電話なんてくれなくてもいいのに」という雰囲気が受話器の向こうから伝わってきました。
それでも続けることが大事。続けることで何かが変わる。
気にしていることを知らせること
思っていることは、思っているだけでは伝わりません。
言葉にしたり行動に表さなければ、誰にもわからないままで終わってしまいます。
私の場合は「定期的な電話」という行動で気持ちを伝えているつもりです。
年に一度の花束では、本当の気持ちは伝えられないように思うのです。
マンネリを続けていればいい
最初の頃は、電話をする前に「今日は何を話そう」と考えていました。
お互いに大した話題もないから、「どうしたの?」「いや別に」で話が続かなかったことも。
考えてみれば、用もないのに電話するって、恋人か相当仲がいい友だちの?笑
それでも恒例化してくると、「週末だから電話してみた」という言い訳?が通用するようになって、それなりに共通の話題が見つかってきて、会話が続くようになりました。
1年続けてやっと・・・
最近は電話すると、こちらが聞く前に
「はいはい元気でやってますよ」
という返事が返ってきます。
特に何もなければ、
「うん、それならいい」
で終わることも。
あまり構えずに電話できるようになりました。
これでいいんですよね。
こういう普通のやり取りになるまで、1年ぐらいかかりました。
たぶん今なら、大事な話も構えずに切り出せるような気がします。
コミュニケーションは、細く途切れず
大事な話がスムースにできるように
相手に興味を持つのは、コミュニケーションの基本です。
特に家族の場合は「言わなくてもいい」という甘えに要注意。言わないと伝わりません。
お互いに努力が必要ですね。
普段からのコミュニケーションが、大事な話をするときに役に立ちます。
これ言わなきゃなー、これ言ったらどんな反応するかなー、という余計なストレスが減るだけでも、日常生活にプラスになるはず。
言えなかったひと言に後悔しないためにも、普段から良いコミュニケーションをキープしたいもの。
普段から心がけたいこと
良いコミュニケーションをキープするために心掛けたいこと
- 感情の小さなすれ違いはためこまない
- ありがとう、ごめんなさいは早め早めに
- コミュニケーションは細く途切れず
- ラクに会話を始められる関係を
- 雑談がとても大事
- 常に意味のある会話をする必要はない
- 言わなくてもわかってくれる人なんていない
- コミュニケーションには努力が必要
特に家族に対してはコミュニケーションの努力をサボりがちですが、日ごろから良いコミュニケーションを意識することで、あとでもっと大変な努力をしなくてもすむかもしれません。
今は母もスマホを使えるようになり、LINEでのやりとりも増えました。でもやはり電話の方が、相手の体調や気分を感じられます。
この状況がいつまで続くのかわかりませんが、もう恒例になった週末の母への電話は、続けられる限り続けるつもりです。
後悔を残さないように、接していこう。
ワクチン接種が進んで、県をまたぐ移動が自由にできるようになることを祈りつつ‥